850nm

     850nmは光の波長で、防犯カメラが発した目には見えない赤外線をもとに作った写真を意味したものである。そのような写真の人間のものではない視点、 人間的な視点以外の機械的な視線に注目している。撮影に使うカメラは、普通のデジタル一眼レフを改造し、すべての可視光線を除いた防犯カメラの特定の波長の赤 外線だけ撮影できるカメラである。また、防犯カメラの自動撮影機能と同じ ように人感センサーを設置し、人が通り過ぎると自動撮影するように設定した。防犯カメ ラの下にカメラを隠し、その間はカメラを動かさず、操作もしないようにした。最終的にメモリーカードを埋まるまで撮影し、300~400 枚ほどの写真が撮れ、その 写真を重ねて作品作りを行った。自分も写真を撮るたびに防犯カメラの範囲に入り、すべての写真に自分の目線を残した。機械の目線のループから抜け出し、視聴者 に見ること、見られることについて考えさせる意図である。シャッターを押すのは人間ではなく、全てカメラ自体によってその撮影が果たされるもので、防犯カメラ に対する防犯カメラとも言える。賑やかな夜の道で、全ての可視光線を取り除くと、群衆が亡霊のように歩いているように見える。